服は単に着れば良いというものではありません。
服は着る人のアイデンティティを表し
社会から仲間はずれされることなく、帰属感をもたらし
着る人の自信を引き出す事もできます。
服は全てこうあるべきですね。
たとえ背が低かろうが高かろうが、
大柄であれ小柄であれ、
子供であれ大人であれ、
年齢に関係なく
身体に障碍があろうが、なかろうが、
全ての人が楽しめるものであるべきなんです。
『服は変化をもたらすことができる』と語るのは2014年にRunway of Dreams Foundation (RODF)という財団を設立したミンディ・シャイアーMindy Scheierさん。彼女はファッションデザイナーであり障碍を持つ子供の母親でもあります。
RODFはファッション界に障碍コミュニティを促進し、障碍者向けの適応デザイン(Adaptive Design)と革新の未来を推進しています。
お恥ずかしい話しですが、正直言って、障碍者が服でこんなにも、日々苦労しているとは知りませんでした。障碍のない人であれば、ボタンをはめたり、チャックをしめたり、袖をまくったり、何の苦労もなく当たり前のようにする行為が障碍のある人にとっては大変です。人に頼らないといけないことで自信を持つ事ができません。
RODFは障碍のある人に自分ひとりでも服を着られる自由を与えました。ボタンやチャックの代わりにマジックテープやマグネットに置き換え、服を調整することで、別な方法で服を着たり脱いだり出来るように工夫しました。実用的な服を着る事で本来あるべき自由を取り戻すことができ、脱いだり着たりする時間も今までとは比べようにないくらい短縮することができました。
また、RODFの見事な功績は大手ファッションブランド、トミー・ヒルフィガーTommy Hilfigerと提携したことでした。そのことで、障碍者向け適応型の主流ファッション服を消費者に直接、提供することができました。2016年に初めて子供用障碍ラインを立ち上げ成功し、昨年の10月にはTommy Hilfigerコレクションに基づいた、障碍者向けのコレクションからスポーツウェアラインを発売開始しました。
障碍がなくても身体に合った服を見つけるのは必ずしも容易ではありません。袖が長過ぎたり、ジーンズがきつかったり、シャツがダボダボだったり。でも他の服を探す選択肢は沢山あり、簡単にお直ししてもらう事もできます。
時代遅れのものを着れば、誰であっても見た目も気分もパッとしません。一方、おしゃれで似合うものを着ると一気に見た目も気分も冴えますね。だからこそ、この大手ファッションブランドが障碍者ラインを始めたことに大きな意義があり、感激しています。
デザイナーのTommy Hilfigerはこう述べています。
「ファッションの包括性と民主化は常に私のブランドのDNAの中核にある。」
彼のビジョン、感動ですね。
このTommy Hilfigerの障碍者向けコレクションは現時点では米国でしか入手できないようですが、近い将来、世界の他の人の手にも届くことを願っています。
英国にもStyleabilityといって、適応性のある障碍者ファッションを通じて、拡張性ある社会変化を目指す団体があります。自立促進、身体に対する自信、若年障碍者の自尊心の向上を目的としています。スタイリスト・イメージコンサルタントであり、私の良き友達でもあるハナジーンHannah Jeanは、最初のStyleabilityプログラムの立ち上げに貢献しました。すばらしい!
私自身、障碍のある親戚がいるので他人ごとではありません。先日、彼にぴったりのLevi’sのジーンズが見つかったので、それを履きはじめたら、今まで履いていたゴムパンと違うせいか、以前よりも自信がついた感じで、ちょっと気分が変わったことは誰がみても明らかだ、と彼の母親は喜んで話してくれました。
日本は世界に誇る高齢化社会。4人に一人は65才以上です。歳を重ねると共に身体の不自由を訴えても不思議ではありません。身体が不自由になった人の自立を援助するファッション業界の対応は現在、どの程度進んでいるのでしょうか。今後、色々と探っていきたいと思います。
服には色々な可能性を託しています。人生を変えることもできます。
あなたの服はどうですか?